この記事で説明する内容は?
可愛い赤ちゃんを産んでしばらくすると、髪をシャンプーした後の排水口にたくさんの抜け毛が付いているのに、びっくりしたママさんも多いのではないでしょうか?
「こんなことがいつまで続くのだろうか?」と、不安に思われたこともあるはずですよね。
お産が終わった後の脱毛は、産後脱毛症とか分娩後脱毛症とも言われるれっきとした病気です。
出産を経験した約7割の女性が産後の抜け毛を経験していると云われています。
しかし、ほとんどが出産後6ヶ月~1年程度で自然に回復します。
それでも、早く治るための治療方法もありますし、治るまでの期間をより快適に過ごす方法もあります。
ここでは、そんな産後の抜け毛について、原因やケアについてご紹介しましょう。
女性の薄毛全般について「FAGAとは?どの薄毛進行度で病院に?女性特有の症状・最新治療薬を徹底解説」で解説していますので併せてご覧ください。
総合頭髪治療を専門とする大阪AGA加藤クリニックグループ総院長 加藤です
臨床的に効果が認められた様々な薄毛・脱毛に有効な最先端の治療を得意としています
平成13年 近畿大学医学部 卒業
平成13年 大阪医科大学医学部付属病院 形成外科入局 麻酔科勤務
平成17年 大手美容外科 形成外科部長 植毛部門勤務
平成23年 大阪AGA加藤クリニック開業
日本形成外科学会 正会員
日本再生医療学会 正会員
国際抗老化再生医療学会 正会員
産後脱毛の原因は?
「産後脱毛症」とか「分娩後脱毛症」と呼ばれる、これらの主な原因は以下です。
- ホルモンバランスの変化
- 生活の変化
それぞれのポイントについて説明します。
ホルモンバランスの変化
妊娠中は女性ホルモンの働きが活発で、ヘアサイクル(毛周期)が一時的に変化します。
出産前後はエストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンが非常に増加します。
エストロゲン(卵胞ホルモン)はいわゆる女性らしさを増強するホルモンです。
プロゲステロン(黄体ホルモン)は妊娠状態を安定させるために体温を上昇させる働きなどがあり、髪のヘアサイクルを伸ばす作用があります。
髪の毛は成長期⇒退行期⇒休止期というサイクルで、生えては抜けて行きます。
妊娠していない時はこの2つのホルモンが約2週間ごとに交互に優位な働きを繰り返します。
しかし、妊娠中はプロゲステロンが優位に働きます。
プロゲステロンの分泌量が増えると成長期の期間が延びて、本来なら休止期を迎えて抜けるはずだった髪の毛が生えたままの状態になっています。
だから妊娠中は髪の毛が増えているように感じる女性も少なくありません。
出産後にプロゲステロンの量が元に戻ると、本来ならバランスよく抜けていた髪の毛が一気に抜けて落ちてしまうのです。
6ヶ月ほどかけて回復することが多い
産後6ヶ月ほどの期間で女性ホルモンのバランスが正常に戻ると、徐々に回復してきます。
ただ、その回復度合いには個人差があります。
目まぐるしく変わるホルモンの状態に産後の体がついて行くことが出来ずに、いろんな影響が体に現れて来ます。
頭皮が敏感になったり、乾燥することで更に抜け毛を増やすことにもなります。
生活の変化
出産後しばらくの間は、母体がまだ完全に回復していないのに、育児に追われるなど、これまでと全く異なる生活が原因のひとつになることもあります。
慣れない育児の不安や疲労、ストレス、授乳から来る栄養不足、睡眠不足などが、余計に抜け毛を加速させるかもしれません。
産後のストレスが重なって、抜け毛が止まらなかったり、酷い場合は円形脱毛症を併発してしまう場合もまれにあるので注意が必要です。
産後の時期以外でも起こりうる円形脱毛症については、こちらの記事で特集していますので併せてごらんください。
個人差はあるでしょうが、一般に産後は「前髪」「生え際」「つむじ」が薄くなることが多いようです。
前髪は元々毛根が浅くなり易く、成長し難い場所にあり、抜け易いのです。
生え際やつむじも毛根が小さめで、髪の毛も細くなりがちなので抜け易いから、産後は、「おでこが広くなった」「頭の上のボリュームがなくなった」と感じるようになるのです。
産後の抜け毛を長引かせる3つの要因
産後の脱毛症を引き起こし、悪化させる以下の要因に気をつけましょう。
- 育児のストレス
- 睡眠不足
- 無理なダイエット
それぞれの要因について説明します。
育児のストレス
出産後の生活はいつも赤ちゃんが中心となってしまい、思い通りにいかなかったり、夜泣きなどで寝不足が続いたりします。その結果、心身ともに疲れ、ストレスが溜まります。
育児のストレスによって交感神経が優位になって筋肉に血液が集中し、内臓への血液供給が低下して、血行不良となり、毛髪に悪影響を及ぼすのです。
睡眠不足
髪の成長ホルモンの分泌が盛んなのは22時~2時の間です。普段なら睡眠中で問題はないのですが、出産直後の赤ちゃんの夜泣きなどで、頻繁に起こされて、適切な睡眠をしていないと、新たな細胞が作られ難くなります。すると、髪はやせ細り、脱毛や薄毛を助長してしまうのです。
無理なダイエット
産後、増加した体重を何とか以前のようなスリムな体に戻そうと、無理なダイエットをしていませんか?急激なダイエットは薄毛や脱毛の大敵です。
急激に体重を減らすと、自律機能の調整を行う総合中枢の視床下部に十分栄養が行き渡らなくなり、ホルモンの分泌が低下します。そのせいで、毛髪の発育が阻害され、余計に抜け毛が増えてしまうのです。
分娩後脱毛症の改善対策8ポイント
ほとんどの場合、分娩後脱毛症は一時的な症状です。それでも、脱毛が多くなる期間中でも症状を和らげてストレスを減らす以下の対策があります。
- 食生活が大切
- 女性用育毛剤の利用
- ストレスコントロールできる状況を作る
- 家族・親族・友人・行政なんでも使えるものは使う!
- シャンプーケアで大きく変わる
- 過度・急激なダイエットはしない
- 髪型でカバー
- 帽子でカバー
それぞれのポイントについて説明します。
食生活が大切
出産後は子ども中心で、ママさん自身の食事がおろそかになっていませんか?
頭皮の状態を整えて発毛を促進するには食生活も大事です。
規則正しい栄養のある食事を心掛けましょう。
重要栄養素 | 脱毛を防ぐための役割 | 多く含まれる食材 |
---|---|---|
たんぱく質 | 髪の原料 | 卵、大豆、肉、魚 |
亜鉛 | たんぱく質と共に育毛に大きな役割 | 牛肉の赤身や豆類 |
イソフラボン | 髪の毛の成長を促し女性ホルモンに似た働き | 大豆(納豆、豆腐、きな粉など) |
ビタミンB6 | 髪の主成分ケラチンを作るのに重要な役割 | マグロやカツオなどの魚 |
葉酸 | 悪性貧血・抜け毛を予防し、母乳の出を良くする | 納豆、ブロッコリー、レバー |
食事で栄養素が十分摂れない場合は、サプリを利用してもよいでしょう。
忙しいからと、自分の食事を疎かにすると、抜け毛や薄毛をかえって悪化させます。出来るだけ食事は規則正しい時間にバランスよく摂りましょう。
一息つける楽しみの食事時間を育児中にも作ることは重要です。また、産後は、特に赤ちゃんの授乳への栄養のために、他の人より多くの栄養を摂ることが肝心です。
女性用育毛剤の利用
女性向けの育毛剤を使って、頭皮の乾燥を防ぎ、和らげて血行を良くするのも良い方法です。産後はホルモンの分泌量の変化のせいで、頭皮が乾燥し易く、バリア機能低下でいろいろな頭皮のトラブルを招く恐れがあります。また、授乳で栄養分が頭皮に行き渡らず、「毛母細胞」が栄養不足になって、髪の毛を育む力が弱くなってしまうこともあるからです。
ただし、男性用の育毛剤の中には、妊娠中・授乳中には避けるべき成分が含まれているものもあります。「女性用の製品であること」「妊娠中・授乳中でも安心して使える製品であること」を確認しましょう。
ストレスコントロールできる状況を作る
育児ストレスは抜け毛や薄毛の原因の1つになります。赤ちゃんの成長を楽しめる余裕を持って、ストレスと上手に付き合える努力をしましょう。
授乳時間を上手く調整し、昼と夜の生活をできるだけ逆転させない生活のリズムを作って、自律神経のバランスを整えましょう。なかなか眠れない場合でも、目をつぶって横になるだけでも大分違います。
出産後の抜け毛や薄毛は一時的なものですから、気に病み過ぎると、そのストレスで余計に抜け毛が増えるケースもあります。一定期間を過ぎればホルモンバランスは元に戻って、抜け毛も自然に解消されますので「出産後の抜け毛は誰にでもある当たり前のこと」と思って、気にし過ぎないようにしましょう。
家族・親族・友人・行政なんでも使えるものは使う!
赤ちゃんの夜泣きや自身の体の変化などで、母親はいっぱいいっぱいです。そのうえ通常の家事などとても1人で抱えきれるものではありません。何でも自分1人でやろうとせず、育児は家族の共同責任です。こんな時こそ、夫、義(父母)、親族、友人に頼りましょう。意外に知られていませんが行政側もさまざまな取り決めや補助金を準備してくれていますし、聞けば意外に親切に教えてくれるものです。
たとえ少しの間でも、赤ちゃんを他の人に見てもらったり、掃除をしてもらったりして、その間に少し仮眠をとるなり、リフレッシュするなどどんどん助けを借りて乗り切りましょう。
シャンプーケアで大きく変わる
頭皮に合わないシャンプーは頭皮湿疹の原因となって、抜け毛が増えたり健康な毛髪の発育を遅らせます。産後の敏感な頭皮には低刺激なアミノ酸系のシャンプーが良いです。シャンプーの仕方も頭皮をマッサージするように優しく洗い、すすぎ残しのないようにしましょう。「髪を美しくより、育てる」に重点を置いたケアが大事で、シャンプー前のブラッシングも丁寧に、頭皮の血行を良くするよう心掛けてください。
シャンプーは産後いつからできる?
以前は産褥期は安静に過ごすべきで出産後1ヶ月くらいはシャンプーを控えた方が良いと言われて来ました。でも、産後に髪を洗わない方が良いと云う根拠は見つからず、産後2日目くらいから、清潔を保つ意味からも洗髪は問題ありません。ただ、体の負担にならないように、手短に済ませるに越したことはありません。
過度・急激なダイエットはしない
食事制限による過度なダイエットは体に必要な栄養が不足することで、心臓や脳と云った大事な部分に栄養が優先的に供給されます。すると、髪の毛に十分栄養が行き渡らなくなって、抜け毛を悪化させます。ダイエットは食事制限のような過度な方法は避けて、運動などによる健康的なダイエットを行いましょう。
髪型でカバー
前髪や頭頂部・生え際の髪の毛が薄くなったために、出産前と同じ髪型にうまくセット出来ない場合は思い切って、違ったヘアスタイルに挑戦してみてはどうでしょうか。 おでこの広さが気になる場合は、「厚めの前髪を作る」のが最適です。頭の上から髪を前に流して、厚めの前髪を作れば、薄くなった前部分をカバーできます。 「シースルーバング」は前髪を薄くして、少し額が見えるようにするもので、清楚や女性らしさ、優しさ、といった印象を与えるヘアスタイルです。これなら、美容院へ行く余裕がなくても、セルフカットで十分出来ますよ。
抜け毛が終わって、生えてきた短い毛が気になってきたら、顔の周りに毛束を多めに残すようにカバーしましょう。生え際に生えた短い髪の毛を、前髪の頂点の横からの毛束で、上から隠すのです。
パーマやヘアカラーはいつからOK?
目安としては、産後の1ヶ月検診で医師から「異常なし」と云われてからがよいでしょう。考慮すべき点が4つあります。
- 腰痛や会陰切開の跡が痛まない?
美容院に行くと長時間椅子に座ることになるので、腰痛や会陰切開のあとが痛むようであったら、もう少し様子を見てからの方が無難です。
- 十分な時間が取れる?
パーマなどの施術には約2~3時間かかるので、授乳間隔がまだ狭い場合、おっぱいが張ってきたり、赤ちゃんがお腹をすかせて泣くことも考えられます。授乳間隔が3時間以上開けられる、粉ミルクを赤ちゃんが飲んでくれる、などが出来るようになれば、安心して出掛けられます。
美容院によっては、産後のママさん向けの施術メニューとして、授乳しながら散髪・ヘアカラー・パーマが出来たり、子連れ用の個室や託児室があったり、他の美容師さんが子供を見ていてくれるなど赤ちゃんに優しいお店もあるので、あなたに合った美容院を見つけてみましょう。
- 頭皮が敏感肌になっていない?
産後のホルモンバランスの変化のせいで、頭皮の状態は敏感になっていて、美容剤でかぶれるケースもあります。
薬剤が母乳に与える影響が心配?
現在、美容剤が母乳に影響を与えると云う報告はなく、その関係性は明らかになっていないのが現状です。ですから、少しでも不安を持たれるのなら、授乳が終わるまではパーマやヘアカラーを避けた方が賢明でしょう。
帽子でカバー
ヘアスタイルまで手が回らない場合は、外出時に帽子をかぶってみてはいかがでしょうか?特に頭頂部の髪の薄さが気になる方にはおススメです。色や形や素材によって、すごく雰囲気が変わるだけでなく、紫外線から髪や頭皮を守ります。洋服によって帽子をコーディネイトすれば、ファッションの幅も広がり、外出が楽しくなることで、メンタル面での向上が体調や髪に良い影響を与えるようになるでしょう。
分娩後脱毛症を病院で治療する場合の費用相場
分娩後脱毛症は自然と改善する方もいますが、薄毛が悪化するケースも沢山あり、女性の薄毛の悩みの1つです。
AGA専門クリニックでは分娩後脱毛症の治療も比較的安価で受けることが可能です。
分娩後脱毛症では「パントガール」というホルモンバランスを整えるお薬で治療するのが一般的です。
パントガールを使用した治療費用目安を紹介します。
- パントガールでの治療 5,000円(検査費)+8,000円(薬代)=13,000円(1カ月)
- 完治までに必要となる治療費用目安 13,000円×3カ月=3万円~4万円
分娩後脱毛症もびまん性脱毛症と同じく早期に治療を開始すれば完治までの費用を抑えることが可能です。
具体的な費用を知るためには実際にカウンセリングで見積もりを取ってください。
まとめ:産後脱毛症は7割起こるので気を楽に
約7割の人が産後の抜け毛を経験するそうです。 産後脱毛は誰にでも起こるものと、気を楽に持つこともストレスを溜めない重要な方法です。
でも、1年以上経っても抜け毛の量が変わらない場合は、「びまん性脱毛症」を疑う必要があります。
びまん性脱毛症についてはこちらの記事で特集しています。