この記事で説明する内容は?
人間の皮膚に常に付着している菌を「常在菌」と呼びます。
常在菌には様々な種類が存在しており、基本的に人体の健康を維持するために働いてくれています。
この常在菌は頭皮にも付着しており、菌が増殖すると、頭皮環境を悪化させる危険性があります。
特に高温多湿な日本の気候では常在菌の1つである「カビ」が繁殖しやすく、カビが原因で薄毛が進行する場合もあります。
そこで今回は頭皮環境を悪化させるカビなどの常在菌が頭皮に与える悪影響とその対策について紹介します。
総合頭髪治療を専門とする大阪AGA加藤クリニックグループ総院長 加藤です
臨床的に効果が認められた様々な薄毛・脱毛に有効な最先端の治療を得意としています
平成13年 近畿大学医学部 卒業
平成13年 大阪医科大学医学部付属病院 形成外科入局 麻酔科勤務
平成17年 大手美容外科 形成外科部長 植毛部門勤務
平成23年 大阪AGA加藤クリニック開業
日本形成外科学会 正会員
日本再生医療学会 正会員
国際抗老化再生医療学会 正会員
常在菌の種類と人体に及ぼす影響
人間の体に存在する常在菌にはどのような種類が存在しているのでしょうか。そこで、薄毛にも関係する常在菌の種類と人体に与える影響について説明します。
皮膚に存在する常在菌の種類
人間の皮膚にはたくさんの菌が付着し、増殖しています。人間の皮膚に付着している主な常在菌を以下に示します。
・表皮ブドウ球菌 ・黄色ブドウ球菌 ・アクネ菌 ・マラセチア菌
表皮ブドウ球菌
人間の皮膚や鼻腔などに付着しています。比較的毒性が少ない常在菌といわれています。表皮ブドウ球菌は皮脂や汗などを餌にして、脂肪酸を生成します。脂肪酸は皮膚を弱酸性に保つ効果があり、皮膚の健康を維持する効果があります。また表皮ブドウ球菌はグリセリンを生成し、皮膚を他の病原菌から保護してくれます。常在菌のなかでも頭皮環境を整えてくれる働きをするので善玉菌に分類されます。
黄色ブドウ球菌
常在菌の中でも毒性が強いのが黄色ブドウ球菌です。黄色ブドウ球菌は毛穴や鼻腔など、様々な部位で増殖を繰り返しています。黄色ブドウ球菌は皮膚がアルカリ性に近づくと増殖して、炎症を起こします。また、皮膚に傷口ができきると、そこで菌が増殖をして化膿する原因となります。常在菌のなかでも悪玉菌に分類されます。免疫力が低下していると、食中毒の原因にもなる危険な常在菌です。
アクネ菌
アクネ菌は表皮ブドウ球菌と同じように皮脂を餌にして脂肪酸とグリセリンという皮膚を守ってくれるバリアを作ってくれます。アクネ菌は酸素がある環境下では死滅するという特徴があり、皮膚の表面ではなく、毛穴の奥や皮脂汗腺などにいます。このアクネ菌は増殖しすぎるとニキビの原因となります。善玉菌と悪玉菌、両方の性質を併せ持っている菌を「日和見菌」と呼び、アクネ菌は日和見菌に分類されます。
マラセチア菌
人の体で増殖して悪さをするカビが「マラセチア菌」です。マラセチア菌は皮脂を餌にして、増殖をします。頭皮・胸・脇・首・耳・背中などの部位で増殖して炎症を起こします。マラセチア菌は薄毛に直結するリスクを抱えています。
常在菌のバランスが崩れると炎症が起きる!?
善玉菌である表皮ブドウ球菌は、悪玉菌である黄色ブドウ球菌の増殖を防ぐ役割があります。表皮ブドウ球菌が減少すれば、頭皮環境が悪化するということです。さらに、湿気が多い夏場はカビの1種であるマラセチア菌が増殖しやすいです。夏は頭皮にとって、大きな山場となります。
常在菌が頭皮に与える悪影響
人間の皮膚には様々な常在菌がいましたね。これら常在菌は頭皮にどのような悪影響を及ぼすのでしょうか。
黄色ブドウ球菌がターンオーバーの乱れを招く!?
お肌の代謝サイクルを「ターンオーバー」と呼びます。正常なターンオーバーのサイクルを以下に示します。
① 基底層(皮膚の一番下)から新しい皮膚細胞が生成される ② 約4週間かけて表皮になる ③ 約6週間で角質となり皮膚から剥がれ落ちる
健康的な人は約6週間かけて、皮膚のターンオーバーを繰り返して、新しい皮膚を構築します。頭皮では、フケという形で古い皮膚細胞が排出されます。常在菌のバランスが乱れると、皮膚に炎症などが起き、ターンオーバーのサイクルを早めてしまう可能性があります。
頭皮が赤色の人は頭皮環境が乱れている可能性が!
実は頭皮の色で頭皮環境をある程度把握することができます。以下に頭皮の色と頭皮の状態を示します。
青色 頭皮の色が青色の場合は、毛根がしっかりと残っており、皮脂の分泌も正常で、良好な頭皮環境と言えるでしょう。
白色 頭皮の色が白色の場合は、皮脂の分泌が少なく、地肌が乾燥している可能性があります。
黄色 頭皮の色が黄色の場合は、過剰に分泌された皮脂が酸化している場合があります。AGAなどの薄毛につながる危険性があります。
赤色 頭皮の色が赤色の場合は、炎症が起きており、頭皮環境が悪化している可能性が大きいです。ターンオーバーが乱れ、薄毛につながる危険性が非常に高いと言えるでしょう。
頭皮の色が赤色の場合は、皮脂が過剰に分泌され、黄色ブドウ球菌やマラセチア菌などの常在菌が増殖している可能性があります。皮脂の過剰分泌は常在菌の温床となります。
常在菌の増殖で脂漏性脱毛症に!?
脂漏性脱毛症では頭皮に痒みや発疹がでて、大量のフケと一緒に脱毛の症状があらわれます。頭皮の痒みや発疹は、常在菌のバランスが崩れている可能性があります。皮脂が過剰に分泌される環境下では、黄色ブドウ球菌などの悪玉菌が頭皮環境を悪化させます。
脂漏性皮膚炎・脂漏性脱毛症の治療方法
常在菌のバランスが崩れ、脂漏性脱毛症になった場合はどのような治療を行うのでしょうか。脂漏性脱毛症の治療方法を紹介します。
外用抗真菌剤と抗ヒスタミン剤を使用する
マラセチア菌が原因の脂漏性皮膚炎や脱毛症には、外用抗真菌剤を使用します。また、アレルギー症状を抑える抗ヒスタミン剤を使用する場合もあります。一般的な皮膚科ではこれらの薬を患者さんに使用して治療を進めていきます。
ステロイド系薬剤を使用する場合も
強い痒みや痛みを伴う場合には、ステロイド系薬剤を患者さんに使用して、治療するケースもあります。しかしステロイド系薬剤は副作用が強いので、効果が弱いステロイド系薬剤を使用するのが一般的です。
ビタミンB2・B6を内服する
脂漏性皮膚炎・脂漏性脱毛症は再発する可能性が高いといわれています。そこで、再発防止をするために、皮脂の分泌を抑える効果があるビタミンB2・B6内服薬を服用する場合があります。
常在菌のバランスを維持し、脂漏性皮膚炎・脂漏性脱毛症を防ぐことはできるのでしょうか。
頭皮環境を改善!常在菌の増殖を防ぐ方法
皮脂が過剰に分泌されることで、悪玉菌の増殖を促し、頭皮環境を悪化させる危険性がありましたね。そこで、常在菌の増殖を防ぐ方法を紹介します。どのような点に注意すれば、常在菌のバランスを正常に保つことができるのでしょうか。
常在菌対策その1!油分の摂取を控える
ファストフードなど、欧米の食文化が根付いた日本では、脂っこい食事を摂取しがちです。油分を多く摂取すると、比例して皮脂の分泌量も増加する傾向にあります。皮脂は常在菌の餌となり、増殖させる要因となります。普段から脂っこい食事をしている方は、油分が少ない和食をおすすめします。
常在菌対策その2!質の良い睡眠をとる
質の良い睡眠をとることで体の免疫力も高まり、黄色ブドウ球菌やマラセチア菌などの悪玉菌の影響を受けにくい体質になります。また、枕カバーやベッドのシーツを定期的に洗濯して、寝具を衛生的に管理することも常在菌対策には重要なことです。
常在菌対策その3!普段から運動をする
普段から運動をしている人の汗は水分の割合が多く、塩分などのミネラルが少ないです。一方、運動不足の人は汗腺の機能が衰えており、汗と一緒に大量の塩分を失ってしまいます。皮膚に付着しているミネラルの量が増加すると、アルカリ性の肌になります。アルカリ性の肌になると、黄色ブドウ球菌が増殖し、痒みや発疹などの症状があらわれます。運動不足の方は、黄色ブドウ球菌が増殖しやすい体質になっている可能性があります。普段からウォーキングなどの運動を取り入れるようにしましょう。
常在菌対策その4!シャンプーは1日1回
シャンプーは1日1回を基準にしましょう。過度な洗髪を行うことで、頭皮は常に乾燥している状態になります。乾燥している状態が続くと、体は皮脂を過剰に分泌するようになります。皮脂が過剰に分泌されれば、常在菌のバランスが崩れ、頭皮に炎症を起こす危険性があります。頭皮の常在菌のバランスを保つには、洗髪は1日1回就寝前に行うようにしましょう。黄色ブドウ球菌が嫌う弱酸性のシャンプーを使用するとより効果的でしょう。
常在菌対策その5!汗をかいたらすぐに拭く
汗をかいたらすぐにハンカチやタオルで拭きとるようにしましょう。汗をかいたまま放っておくとマラセチア菌が増殖して頭皮に炎症を起こします。入浴後はきちんとドライヤーで髪の毛を乾かすようにしましょう。
常在菌対策その6!定期的に爪を切る
雑菌がたくさんいる爪は、定期的に切るようにしましょう。爪を伸ばしていると、洗髪をしたときや、タオルで頭を拭く際に、頭皮に傷をつける可能性があります。頭皮に傷ができると黄色ブドウ球菌が増殖して、頭皮環境が悪化してしまいます。爪は伸びたらきちんと切るようにしましょう。当たり前のことですが、頭皮環境を維持するためには大切なことです。
常在菌対策その7!ストレス発散で免疫力を向上
免疫力が低下していると、悪玉菌である黄色ブドウ球菌やマラセチア菌の影響を受けやすくなります。ストレスを発散することで、体の免疫力が向上し、悪さをする常在菌の影響を受けにくくなります。ストレス発散も常在菌対策には必要です。
脂漏性脱毛症を防ぐには生活習慣の見直しが必要!
脂漏性皮膚炎・脂漏性脱毛症を防ぐには常在菌のバランスを保つことが重要でしたね。特に汗をかきやすい夏場は、悪玉菌のマラセチア菌や黄色ブドウ球菌が増殖しやすいです。脂漏性皮膚炎・脂漏性脱毛症は誰にでも起きる疾患なので、要注意です。皮膚の炎症や頭皮のフケが気になる方は、早めに頭髪専門クリニックに相談することをおすすめします。